小規模な区画の再編・活用について
多くの都市において、人口の減少・高齢化問題にあわせ、公共公益施設の老朽化など様々な問題に対応しながら「まち」の再編を進めることが、喫緊の課題となっています。また、近年のまちづくりにおいては、社会情勢の変化やライフスタイルの多様化に対応する「まちの価値」と「持続の可能性」を高める取り組みも求められています。 このような多様化・複雑化する市街地整備のニーズに対応するためには、既成概念にとらわれずに土地区画整理事業を柔軟に活用して市街地の再整備を進める「柔らかい区画整理」が効果的と考えられます。
「小規模な区画」とは
「小規模な区画」とは、一般的に1,000㎡~10,000㎡(1ha)程度の「街区レベル」の規模の土地を想定し
ています。ただし、課題やニーズに応じて、連坦した街区や、 街区の一部分で実施することも考えられ、柔軟に土地の大き
さを考えることが可能です。
「再編・活用」とは
中心市街地において、空き地・空き家等の低未利用地等の入替え又は集約により、整形化されたまとまった土地を創出
し、まちづくりの課題(土地の有効高度利用、都市機能の集約、防災性向上、雇用創出、定住促進、地域活性化等)を解消
すること。小規模な区画からでも連鎖的に進めることで、市街地を面的に再生し「まちづくり」を進めることにつながりま
す。
「柔らかい区画整理」とは
一定の整備がなされたまちなか等の既成市街地において、既成概念にとらわれずに土地区画整理事業を柔軟に活用して再
整備を進める手法を「柔らかい区画整理」と呼んでいます。中心市街地の課題が多様化・複雑化する現在は、地区ごとの課
題や事業の実現性に応じ、「小規模・短期間・民間主導」型の区画再編を進めることによって、地域の魅力を高め、かつ、
スピーディな実践に資する「柔らかい区画整理」の活用の有効性が高まっています。
~小規模な区画の再編・活用の例~
⚪︎点在する低未利用地を集約して、都市機能(医療、福祉、公共サービス等)を誘導します。
⚪︎敷地の入れ替えによる土地の有効高度利用を推進します。
⚪︎合意形成が図りやすい小範囲で、連鎖的な再編により基盤整備を進め、密集市街地を解消します。
⚪︎先行街区に共同住宅を整備し、従前地権者が順次移り住んで、コミュニティを維持・再生します。
小規模な土地区画整理事業の特長
⚪︎事業期間が短い
・大規模な事業に比べて事業期間が短く(平均2年弱)、事業効果の早期発現を期待できる。
⚪︎合意形成が図りやすい
・地権者が比較的少人数で合意形成が図りやすい。
・個人施行(同意含む)が多数を占めている。
⚪︎減歩負担は少なめ
・特に市街地における小規模な土地区画整理事業では、土地の入替え中心で公共減歩の負担は比較的小さい事業が多
い。
・保留地を設けず、地権者負担金や補助金により事業費を賄っている。
⚪︎柔軟な運用を活用
・敷地整序、集約換地、連鎖型 等の柔らかい区画手法を積極的に活用している。
熟度の高い箇所から順次事業を立ち上げることで、事業の機動的な推進とその早期完了を図ることが可能です。
小規模な土地区画整理事業で活用しやすい手法
(1)敷地整序型土地区画整理事業
近年では一定の基盤整備がなされているものの、細分化された土地や空き地・空き家などの低未利用地が散見されて
いる既成市街地内で活用されることが増えてきており、土地の有効利用を促進するために、敷地の集約化・共同化する
場面での有効な手法です。
<敷地整序型土地区画整理事業による大街区化のイメージ>
<敷地整序型土地区画整理事業の特長と効果>
(2)任意の申出換地による集約
「申出換地」とは、換地の位置について「照応の原則」によらずに、地権者の申出に沿って換地を集約する手法で
す。既成市街地において、空き地や空き家等の小規模かつ不整形な低未利用地を集めて有効に活用したい場合に、合意
形成がまとまる小規模な範囲で事業化すれば、早期に利用増進が得られるメリットがあります。
(3)小規模区画整理に適した支援制度~都市再生区画整理事業
都市基盤が脆弱で整備が必要な既成市街地の再生等を行う土地区画整理事業については、地方公共団体が「社会資本
総合整備計画」を作成し、この計画に基づく基幹事業として位置付けることにより、公共施設の整備等について社会資
本整備総合交付金による支援を活用することができます。
1)一般的な手法:都市基盤整備タイプ
都市基盤整備タイプの施行地区要件は以下のとおりです。
⚪︎施行地区要件(以下のすべてを満たす地区)
・「換算面積(施行面積×指定容積率(%)/100)」が2ha以上
・直前の国勢調査に基づくDIDにかかる地区(重点地区の場合はDID内)
・市町村マスタープラン等の法に基づく計画等に位置づけがあること
・施行前の公共用地率15%未満(幹線道路等を除く)
2)より小規模な区画にも活用できる手法:空間再編賑わい創出タイプ・地域生活拠点形成タイプ
立地適正化計画(住宅及び誘導施設の立地の適正化を図るための計画(都市再生特別措置法第81条第1項)
)に位置づけられた医療・社会福祉・教育文化施設等の「誘導施設(都市再生特別措置法第81条第2項第3
号)」の整備を目的とした区画の再編を行う事業で一定の要件を満たす場合は、換算面積0.5ha以上か
ら都市再生区画整理事業の支援を受けることができます。
⚪︎空間再編賑わい創出タイプ
立地適正化計画に記載された土地区画整理事業について、事業計画に「誘導施設整備区」を設定し
、散在する空き地等の低未利用地を対象として、所有者からの申出に基づき、当該空き地等の換地を
誘導施設整備区内に集約することを可能とするものです。都市のスポンジ化対策として、低未利用地
の集約・活用及び都市機能の強化を目的として平成30年度に創設された制度です。
・面積要件 :換算面積0.5ha以上
・交付限度額には、「誘導施設の敷地上の建築物等の移転補償費」を含みます。
⚪︎地域生活拠点形成タイプ(令和5年度より創設)
誘導施設の整備を目的とした区画の再編・集約を、「任意の申出換地」により実施する事業です。
関係権利者の合意による申出換地に基づくものであり、誘導施設整備のための用地に換地する従前地
については、空き地に限られません。
・面積要件、交付限度額は空間再編賑わい創出タイプと同じ。
<空間再編賑わい創出タイプ・地域生活拠点形成タイプの比較>
≪参考≫ 「法定申出換地」と「任意の申出換地」
申出換地には、土地区画整理法等の規定に基づいて行われる「法定申出換地」と法律の規定に基づかない「任意の申出
換地」があります。
・「法定申出換地」は、申出の対象街区が事業計画に明示され、位置の照応の例外として対象街区に換地することが
法令で定められますが、対象街区の目的や利用方法は法令で限定されます。
・「任意の申出換地」は、申出換地に関係する権利者全員の合意に基づくものであるため、集約した換地の利用方法
は任意に決めることができます。